キャンティ地区にあるレストラン「レ・チェルナッキエ(LECERNACCHIE)」で作ったその日の料理をフィレンツェに運び、「イル・チェルナッキーノ」で販売している。この販売方法がじつに面白い。店内に肉系や野菜系のスープ類がテラコッタの茶色の鍋に入って、ズラリと並んでいる。ショーケースに置いてあるため、直接に料理が見れるし、指差しオーダーも可能だ。黒胡椒が効いたペポーゾや、トマトソースで白豆をコトコト煮たスープ、兎の肉を煮込んだスープなど、すべてトスカーナの郷土料理である。そのままお皿でいただいても良いし、大小2サイズあるコロンとした丸形で、中身のくり抜いたパンに注いでもらっても良い。パンはあらかじめ温めてくれて、表面はサクっ、中はモチモチしていて、とても美味である。そこに好きなスープ類を選んで、パン&スープが楽しめるわけだ。大きなパンは直径12センチほどでガンゾ(GANZO)と言い、一つ5ユーロ(スープ付き)。そして、小さなパンは直径7センチほどでガンジーノ(GANZINO)といい、一つ2.5ユーロ(スープ付き)である。ガンゾで1つのスープを堪能するのも良いが、ガンジーノを2つ注文して2種類のスープを味わうのもオススメだ。飲み物は水、ジュース、ワインなどがあり、ワインはセルフサービスでプラスチックのコップに注ぐようになっている。また、食後のデザートには、トスカーナの揚げ物お菓子や焼き物お菓子、そしてチョコレート菓子など3〜5種類用意がある。さらに、イタリアのバールではあまり美味しくないアメリカンコーヒーが、「イル・チェルナッキーノ」ではドリップ式で置いてあり、なかなかの美味である。
店内は小さいながら、5テーブルくらいのスペースが2階にはあるので、イタリアでは珍しく「座って」サクっと食事ができる。「ファーストフードでも、ただお腹を膨らませるだけでなく、本当に美味しいものをお客さんに出したい。」という、このお店を切り盛りするおばさんの思いが伝わる料理だ。手作りの温かい料理は、心身ともにホッと優しい気持ちにさせてくれる。スープ類のほか、地元の人が生産した少量生産のハムやサラミ、チーズ類も置いてあるので、トスカーナ流ファーストフードはかなりオススメだ。