フィレンツェでは小さなスペースで、変わり種のパニーノを提供している新顔のお店が目に付くが、「セメル」もその1つである。ここの変わり種は、スーパーではほとんど手に入らない野性味ある肉を煮込み、具として挟んだ「ジビエ・パニーノ」だ。ジビエとは狩猟で捕らえた動物の肉を使用した料理のことで、ここフィレンツェは海がない内地のため、狩猟が盛んなのである。ジビエ料理に代表される動物には、イノシシ、野兎、キジなどがいる。
「セメル」の店内は六畳もないほど手狭で、座って食べれるスペースは二畳ほどと4人も入ればギュウギュウ状態だ。ジビエだけでなく、万人ウケする牛肉とロバの用意もある。ロバの肉は、意外に淡白であっさりしていて美味しい。これをグラス一杯の赤ワインでいただくのは、小さな幸せである。