シンガポールには、WorldWarIISitesofSingaporeという記念碑が11箇所あるのだが、「ラブラドール・バッテリー(砲台)」は、その第6番目の記念碑がここにある。場所は、シンガポール本島の南端に近いところ、セントーサ島の本島側。正確に言うと、セントーサ島の西端にあるシロソ砲台の向かい側。ラブラドール砲台とシロソ砲台は兄弟のようなもの、ケッペル港へ入る西側の水道を守るための砲台群。ラブラドール砲台に、最初に大砲が設置されたのは1878年で、1867年4月1日にイギリス本国直轄植民地になってからでの設置となる。現在は、ラブラドールネーチャーパーク(ラブラドール自然公園)となっている。
駐車場に車を停めて、左手の丘の方へ登っていくと、砲台の弾薬庫(Casemate)にでる。左右にある階段を登ると小さな広場に出るのだが、左手に冒頭の記念碑がある。ラブラドール砲台には、1942年の時点で2門の6インチ砲(弾丸径15cm)が配備されていたが、この記念碑がある場所がまさしく2門のうちの1門が設置されていた場所のよう。もう1門は、右手の方に設置されていたはず。また、記念碑の近くに、海に面した展望台があり、そこから海を眺められる。ここから、遠方に見える白煙を吐いている設備は、シンガポールの石油精製施設。この砲台も、日本軍に対して発砲したそう。
PasirPanjangの尾根を第18師団が攻撃したときに、マレー第一旅団が防衛をしたのだが、その時にこの砲台から支援砲撃をしたとのこと。記念碑の周囲には、多数の説明板が設置されている。そのうちの1枚に、当時シンガポールに設置されていた砲台の詳細が記されていた。これによると、当砲台は6インチ砲2門で構成され、徹甲弾(APで表示されている)は500発、榴弾(HEで表示されている)は50発しか無かったよう。徹甲弾は、軍艦に向けて効果がある砲弾だが、陸上目標には殆ど効果はない。陸上目標に効果があるのは榴弾。それが1門当り50発しかないのでは話にならない。また、6インチ砲の射程距離は17000ヤード(15500m)とある。ちなみに、ジョホール・バッテリーの15インチ砲の射程距離は、35900ヤード(33700m)となっている。そして、正面に見えるのが、セントーサ島のシロソ要塞のある場所。記念碑の周辺にある説明文では、この砲台もシンガポール防御の一助となったあるが、前述のように1門当り僅か50発の榴弾では、防御の効果は知れたものだったと思われる。