かつては魔の巣窟と呼ばれた九龍城砦。しかし今は取り壊されその跡地は公園になっている。もともと一つの建物に増築に次ぐ増築を重ね、その外観は正に巨大な蜂の巣のような有様を呈していた違法建築物で、中は迷路の様になっており犯罪者などが逃げ込むのに格好のエリアであった。しかしながら一方で、中国、香港、イギリスのどこの主権も及ばないため大陸から難を逃れ(大躍進政策、文化大革命など)てきた移民などもおり、生活の糧を得るための仕事として九龍城内の工場勤務や飲食店経営などを行う者もいた。とても営業許可が下りるような衛生状態ではなかったが、ピーク時は香港の高級レストランでも納入される点心の食材は7割がここで生産されたという説もある。
最盛期にはありとあらゆる犯罪の温床と化していたが、取り壊しが決まりその保障問題のために調査をしたところなんと約3万人(一説では5万人とも言われている)の住民が生活していたことが初めて公にされた。その頃には警官の巡回もあったが皮肉なことに城内のほうが外より治安が良かったと言われている。
その後取り壊され、それに前後して住民たちの一部であるタイ系の人達がこの九龍城砦の南側にあるエリアで飲食店を始めた。タイ華僑と香港の繋がりは深く、タイから仕事を求めて香港にやってくるタイ人が集まったりタイ食材を扱う店もあったりしたため、このエリアはタイ料理の店が多い。香港人とタイ料理を食べに行こうというと決まってここに案内される。
今ではその面影もなくなり、九龍城砦も 九龍寨城公園となり、老人や子供たちの憩いの場、遊び場となっている。しかし、南側一帯のエリアは下町色が色濃く残り、タイ料理といえば九龍城と、いわば代名詞のようになっている。
役立つ情報
九龍寨城公園内は全面禁煙。