「ザ・リッツ・カールトン」は日本のホテル・フリークの間でも人気の高級ホテル・チェーンだが、ハイアットやスターウッドのような太っ腹な会員プ ログラムがないため、庶民にはやや高いイメージがある。にもかかわらず、ファンが多い。「ザ・リッツ・カールトン北京セントラル・プレイス」は、北京市南東にある地下鉄1号線「大望路」駅からわずか徒歩3分という距離だ。市内一の繁華街「王府井」から も地下鉄1号線で5駅なので、北京では比較的交通の便に恵まれた場所にある。ホテル隣の「新光天地」は、多くの高級ブランドが入った台湾資本のデパートで、小籠包(ショーロンポウ)で有名な台湾の「鼎泰豐(ディンタイフォン)」や同じく台湾のスイーツに定評のある「鹿港小鎮」なども入っ ている。「新光天地」の裏側に現れる白い建物が「ザ・リッツ・カールトン北京セントラル・プレイス」だ。このホテルは隣にある同じマリオット・グループの「JWマリオット北京」とを繋ぐ連絡通路でがある。建物はホテルのみの独立した17階建てで、一見こじんまりとしたホテルに見えるが、客室数は320もあり、東京よりも多いという。
ファイナンシャル・ストリートとは対照的な雰囲気のセントラル・プレイス
小さなエントランスからホテルの中へ一歩足を踏み入れると、英国貴族の邸宅を思わせる重厚なヨーロピアン・テイストが漂う空間が広がっている。モダン・チャイニーズをデザ イン・コンセプトとしているファイナンシャル・ストリートとは同じホテルだと思えないほど対照的な雰囲気だ。エントランスから入って右側がフロント、正面奥はロビー・ラウンジ、左側ははおそらくハイアット・オン・ザ・バンドと同じレストラン「AROMA」となっている。まさにイメージ通りのクラシックで、典型的なリッツの空間がそこには広がっている。ただ、ひとつ気になるのは、警備員の多さ。これは中国のホテルではよくありがち。ちょっとウロウロしているだけで声を掛けられそうな雰囲気で、リラックスできない。リッツに泊まるならやはりクラブ・フロアを選ぶのが醍醐味だろう。中国のホテルはチェックイン時間の前でも部屋に入れてもらえることが多い。ちなみに、クラブ・ラウンジには日本人スタッフの姿も。
シティ・ビューか、それともガーデン・ビューか
ホテルの客室はシティ・ビューとガーデン・ビューとの区別がある。クラブ・フロアのゲストルームはすべてシティ・ビューだが、シティというよりはマンション・ビューだ。たとえ高層階の部屋であっても、周りのマンションやオフィスビルのほうが更に高いため、夜景を楽しむことはおろか、カーテンを開けたままにしておくと逆に部屋 の中を覗かれてしまうので危険。 ちなみにガーデン・ビューの方は、正確に言うとホテルのエントランス・ビューなので、正直お金を余計に払ってまで泊まるほどでもないといった印象。
さすがにリッツなので、ハード面では期待を裏切らない。特に印象的なのはオットマン付きのチェア。体が沈むほど柔らかくて快適。ベッドも、ツインなのでそれほど大きくはないものの、とにかく厚みがあって心地よい。その他の設備についても本当に申し分ない。ベッド前にはフィリップの大型液晶テレビがあり、窓には左右 に開くレースのカーテンと上下に開閉する電動ロール・スクリーン。そして、ナイトテーブルに置かれているi podステーションなど。ファイナンシャル・ストリートでは間違ったホテル案内の日本語訳も、こちらはちゃん訳されている。同じリッツでも総体的にファイナンシャル・ストリートよりもこちらのほうが好印象だ。
面白いのは、これほど客室はヨーロピアン・テイスト濃厚なのに、中国風の急須とバスローブの他にパジャマではなく浴衣が用意されている点だ。浴衣 は中国の高級ホテルでもパジャマの代わりに置いているところが多いようだ。
冷蔵庫の中身は、普通のホテルと変わらない。ティーパックは、NESCAFEのコーヒーとRonnefeldt(ロンネフェルト)の紅茶が用意されている。ちなみにRonnefeldtのティーパックは高級ホテルでよく見るが、なんでもドイツの高級ホテルの9割が使用し、ドバイにある世界で唯一の7つ星ホテル「バージ・アル・アラブ」でも使われているという。
付帯施設情報
クラブ・ラウンジは「ホテルの中のホテル」
ザ・リッツ・カールトン北京セントラル・プレイスのクラブ・ラウンジはガーデン側に 位置していて、窓の外にはちょっとした緑が広がっている。これはガーデン・ビューの客室から見る景色と同じ。「ガーデン」と名が付いているものの、ガーデ ンというよりはホテルのエントランス(左に見えるエントランスは、JWマリオット北京)。やはりコンラッド東京の浜離宮庭園が見えるガーデンビューとは比 べられない。
ザ・リッツ・カールトン北京セントラル・プレイスでは以下のような時間にドリンクと軽食サービスを楽しむことができる。今回、午後1時のチェックイ ンから翌日午後4時のチェックアウトまで計27時間思う存分クラブ・ラウンジを満喫することができた。
朝食
午前 6:30 - 午前10:30
軽食ランチ
午前11:30 - 午後 1:30
アフタヌーンティ
午後 2:00 - 午後 4:30
カクテルアワー
午後 5:30 - 午後 7:30
スイーツ&アルコール
午後 8:00 - 午後10:00
まずランチは、ベーグル、サンドイッチ、魚料理、サラダ、ケーキなど。アフタヌーンティは、スコーン、サンドイッチ、フ ルーツポンチ、ヨーグルト、ケーキなど。カクテルアワーは、フィンガーフードとケーキ など。スイーツ&アルコールは、ケーキなどが用意されていた。その他、いずれの時間帯にもフルーツ、クッキー、キャンディなどがまるでインテリアの一部の ようにところどころに飾られて、遊び心が感じられた。
少し期待はずれだったのはアフタヌーンティのスコーンと朝食の種類。スコーンはちょっと想像していたものとは違い、うまく言葉で表現できないけれ ど、少し アレンジされたものだった。朝食はコンチネンタルブレクファストなので、卵料理がなく、全体的に種類は少なめだった。温かい食べ物としては、ソーセージや ベーコン、中華料理の点心などがあった気がする。とはいえ、クラブ・ラウンジで一日中飲み食いできることを考えれば、あのくらいの朝食の量でも十分。
クラブ・フロアは絶対にオススメ。リッツとはいえ、中国のリッツなので、宿泊前は過度な期待を抱かないようにしていたけれど、 実際泊まってみると、ここのクラブ・ラウンジはスタッフのサービスにしても料理にしても共に大変満足のいくレベルだった。東京や大阪のリッツにはまだ泊 まったことがないけれど、それらと比べても決して遜色ないのではないかと思う。
隠れ家的なフィットネス・センター
地下にフィットネス・センターがあったファイナンシャル・スト リートのリッツとは対照的に、ここは最上階の17階にスパ&フィットネス施設が設けられている。クラブ・ラウンジではよく欧米人が食事している姿を見かけ たけれど、ここのフィットネス・センターでは宿泊中結局一度も他のゲストと顔を合わせることはなかった。本当に静かだった。
ジムとス イミングプールはどちらもクラブ・フロアの客室と同じ方向を向いていて、窓から見えるのはいわゆるシティ・ビュー。正確には新光天地とマンション・ ビュー。景色については、大気汚染で空気がひどく濁っていて、すぐ近くにある建物さえクリアに見ることができないので、期待することはできないけれど、そ れでも窓のあるジム&プールはやはり開放的で気持ちが良い。
ジムは主にランニングマシーンが中心で、その他のトレーニングマシンは少なめに感じた。ホテルに宿泊して本格的に運動する人は少ないかもしれない。
一 方、プールは素晴らしかった。中国なのに水が透き通っていたことにまず感動。水温もちょうど良かった。プールの外にはちょっとしたテラスのようなスペース があり、外に出られるようになっている。繰り返しになるけれど、残念なのは、外の空気もそこから望む景色もあまりそこでくつろごうという気分にさせてくれ ないこと。