賑やかな商店街の一角に突如として荘厳な教会が現れます。この教会は、1746年に彫刻家であったアザム兄弟によって建立されました。運よく自宅の隣地を手に入れた兄弟は、自分たちのためのプライベート教会をデザインしました。これがアザム教会です。この教会は、14世紀のボヘミア人の修道士であった聖ヨハン・ネポムークに捧げられています。バロック様式とロココ様式が混在した建築様式は、ガウディを彷彿とさせます。現在は公の教会として使用されているアザム教会ですが、もともとは兄弟の私的な教会として建立されたため、内部の装飾には、兄弟の美的感覚が遺憾なく発揮されています。金銀とピンクを基調にした色使いは、見方によっては派手で安っぽい印象を与えるため、悪趣味であると評価する人も多いのは事実です。私たちがこの教会を訪れた時刻は、扉が閉ざされる少し前でした。終わりの時間がくると、祭壇の奥のほうから年老いた修道女が現れました。彼女は祭壇に一礼してから回廊の椅子に腰掛けて、しばらくの間、静かに祈りを捧げていました。それからおもむろに立ち上がると、扉のほうへ向かって歩みを進め、ドイツ語で教会が閉まることを告げました。言葉は分かりませんでしたが、私たちは気配を察して扉のほうへと急ぎました。私が修道女に向かって英語で「ありがとう。」と挨拶すると、彼女はにっこり笑ってドイツ語で何か言いました。何を言ったのかは聞き取れませんでしたが、彼女はとても優しい穏やかな顔をしていました。信仰を静かに守る人の顔はいつも穏やかで、隣人に安らぎを与えてくれます。