ランタオ島の外れに大澳という街がある。現在、香港で唯一水上家屋の集落がある街である。大澳の街としての歴史は古く、ランタオ島における政治・経済の中心は実は大澳なのだそうであるが、このことはあまり知られていない。
街の入り口は海に面した小さなバス乗り場で、ここから細い路地を入り、『新基大橋』という小さな吊り橋を渡ると水上家屋の集落のエリアとなる。
集落の中に続く細い道の両側には家屋があり、海面に面した方の家屋は全て海面上に張り出した造りになっており、裏口から梯子や階段などで下に係留してあるボートに乗れるようになっている。海面といっても浅い入り江なので、乾季には海底が露出している所もある。エビの養殖でもやっているのか、養殖池のようなものが所々にあり、客家特有の帽子を被った女性たちが作業している光景をよく見る。また番犬代わりなのか大型犬を飼っている家が多く、たまに追いかけられることもあるが、犬たちは比較的大人しい。街の商店などで売っている貝柱などは上環の乾物屋街より2割程度安く買える。本当に『鄙びた』という形容が似合う街だが、ちゃんと電気は通っていて、各家屋ではテレビや冷蔵庫が使われている。それでも、数年前の火災で全体の2割の家屋が焼失し、現在も過疎化が進んでいるという。
香港中心部からのアクセスは、地下鉄東涌線で終点の東涌下車、そこから大澳行きのバスで終点まで所要時間約2時間、又は九広西線で元朗か屯門まで行き、軽便鉄道で屯門フェリー乗り場へ移動、そこからフェリーで行く事もできる。但し、フェリーは一日4便しかないので、行きは地下鉄、帰りの時間が間に合えばフェリーというのがお勧め。歴史的・文化的に見る価値のある集落だが、観光地ではないので訪れる際にはトイレなどは事前に済ませておくことが望ましい。