香港はグルメやショッピングのイメージが強いが、実は世界最大規模の貿易港でもある。海の仕事に従事している人が非常に多い。
その「海」をテーマにした博物館が、赤柱(スタンレー)にある法定古跡「美利大厦(マレーハウス)」内に、2005年9月9日オープンした。オープニング前日のセレモニーには、曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官も出席していることからも、力を入れているのがわかる。この香港海事博物館は香港の船舶会社が協力し、設立した基金で運営しているが、董建華前行政長官の親族が経営する「東方海外」も含まれているので、政府の協力もかなりあるものと思われる。
展示内容は、2つのパートに分かれている。一つは古代からアヘン戦争に至るまでのAncientGallery(歴史館)で、もう一つはModernGallery(現代)の海運についての展示館である。
AncientGalleryは、中国古代の海運の発展、東南アジアの貿易発展、ヨーロッパのアジア進出、中国沿岸部における諸外国と交易(茶貿易、アヘン貿易など含む)など、古代から近代までの海の歴史を中心にに紹介している。19世紀後半、「ティーレース」に使われていた快速クリッパー船「Thermopylae号」の模型の展示がある。中国南部からイギリスまで最速91日間で航行したという歴史を持つ船だ。中国茶に関連する書籍にも、たびたび登場する。ModernGalleryは、現代船舶の模型、実物大の船橋(デッキ)と無線室、コンテナ港の機能、香港海運の発展、未来の船舶などが展示されている。香港開港後からの歴史的発展の展示のほかに、主要な世界の貿易港として最先端の港湾施設を構築していることをアピールしている。このGalleryでの一番人気は、実物大の船橋(デッキ)による大型シュミレーションゲームだ。大型スクリーンにビクトリア湾が映し出され、舵を動かしながら操縦するもので、子どもはもちろん、大人でも楽しめるものになっている。そのほかに人気なのが、コンテナをいかに早く正確に積み下ろしできるかというコンピューターゲーム。真面目な展示内容だけでなく、こうした遊び心もあるのが良い。
内容としては模型の展示が多いので、飽きずに見学できる。博物館の規模は、30分~40分で十分と大きくはない。食事をしに来たり、買い物ついでにちょっと立ち寄るくらいがちょうど良いだろう。