やさしい味のトスカーナ家庭料理がいただける「リストランテ・ディーノ」。ずっと通っていても、一度も裏切られたことのないたしかなお店だ。オススメのパスタは「Spaghetti alla bottarga di muggine」、からすみのスパゲティだ。他のレストランでも見かけるメニューだが、通常は市販のビンに入った粉状のものをスパゲティにふりかける。ところが、ここ「リストランテ・ディーノ」は茹で上げたスパゲティに、まず溶いた鶏卵を絡ませてからその上に、トリュフスライサーで生のからすみをたっぶりと散らすのである。からすみがパスタにうまい具合絡み付いて、ぼらの卵の香りが口の中に広がる品だ。「Spaghetti di Carciofi」、アーティチョークのスパゲティはシンプルなボッタルガのスパゲティとは対照的で、とてもいろいろな風味と味が複合した逸品である。最初に、口に含むとかすかなにんにくの風味を感じるが、噛み締めるとあのカルチョーフィ独特の味と香り、そして程好くも存在感があるペペロンチーノの心地よい辛味がすぐにやってくる。神業ともいえる絶妙なバランスだ。「リストランテ・ディーノ」に来る多くのお客さん、特にミシュランの星を取ったこともあるというので多くの外国人は、セコンドにトスカーナの名物料理である「フィレンツェ風ステーキ」を注文するが、ここのオススメのひとつが「Petti di pollo alla mediterranea」、鶏の胸肉の地中海風だ。軟らかくて、しっとりとした鶏の胸肉を炭火で焼き、ルッコラとトマトを上からのせた料理。そのあいだには、白オリーブと黒オリーブをすり潰して作ったソースが潜んでおり、タメ息のでるおいしさだ。
また、ワインのセレクションも幅広く、オーナーが常にいろいろなところで買い付けをしているよう。しかも、とても良心的な値段である。さらに、先代(初代)のオーナーはトスカーナ州で最初にソムリエの資格を取った人としても有名だ。