ロンドンの街角には色々な言語が飛び交い、様々な人種の人々が暮らしています。街を歩いているとイスラム風の衣装に身を包んだ紳士やご婦人をよく目にします。ターバンを巻いたシーク教徒や、おでこにビンディーやティラカを施したヒンズー教徒も見かけます。しかしながら、ロンドンの中心街で正装したユダヤ教徒にお目にかかることは滅多にありません。全く見かけないということではないのですが、他の民族、宗教的な衣装を着た人々に比べると少ないように思います。
食べ物に関しても、ハラルレストランは街のいたるところにありますが、ユダヤ教の適正食品を扱うコーシャレストランはあまり見かけません。コーシャ・ベーカリーコーシャとはヘブライ語で「ふさわしい」とか「適正な」という意味で、ユダヤ教の食事に関する掟「カシュルート(食事規定)」に即した食品をコーシャ食品とよびます。ユダヤ教では豚肉、貝類、甲殻類、ウロコのない魚などを食べることが戒律で厳しく禁じられています。食品がコーシャとして認定を受けるためには、ユダヤ教認証団体から派遣されたラビ(ユダヤ教の聖職者)の検査を受ける必要があります。
Golders Green(ゴールダースグリーン)のハイストリートにあるユダヤ系のカフェやレストランなどの食品を扱うお店にはこの認定証を貼ってあるお店が多いです。ユダヤ教徒のなかでもウルトラオーソドックス(超正統派)の男性は、長く伸ばした髭と、黒い帽子に黒いスーツで常に正装しているのが特徴です。既婚女性は戒律で髪を剃るという教えがあるため、厳格な人は外出時に鬘や帽子をかぶったり、スカーフで頭部を覆っています。このように厳しい戒律を守り続けるウルトラオーソドックス人々の多くは、ロンドン北部のFinchely(フィンチェリー)、ゴールダースグリーン界隈に住んでいます。ユダヤ教も他の宗教と同様にいくつかの宗派に分かれており、また、個人の信仰の度合いにもよって、頭にキッパとよばれる帽子だけを身に付けている人や、シナゴーク(ユダヤ教の寺院)に行くとき以外はキッパも身に付ない人もいて同じユダヤ教徒といっても様々です。