「WallaceCollection(ウォレス・コレクション)」は、ロンドン随一の繁華街で、お店やデパートが軒を連ねるOxfordStreet(オックスフォード・ストリート)の裏手、マンチェスター・スクエアにある。オックスフォード・ストリートは、買物客で溢れる活気のある通りですが、そこから一本、道を隔てたマンチェスター・スクエアは、閑静な住宅街で落ち着いた雰囲気に包まれている。ウォレス・コレクションは、大英博物館などと同様に国立の博物館で、古美術のコレクターであったSirRichardWallace(リチャード・ウォレス)の高祖父の代からの収集品を展示。ウォレスの未亡人が亡くなった後は、建物と共に全ての収蔵品が国に遺贈され、1900年からは博物館として一般開放されている。ウォレスの父親であるRichardSeymour-Conwayは、大半の時間をパリに所有する邸宅で過ごしたため、ウォレス・コレクションには18世紀、19世紀のフランスの絵画や美術品が多く収蔵されている。特にセーブル焼きのコレクションは世界最大の規模を誇る。また、ルネサンスや中世の美術品や甲冑、刀なども充実している。
建物は、HertfordHouse(ハートフォード・ハウス)と呼ばれるタウンハウスで1776年から1788年にかけて建設された。1797年にウォレスの曽祖父がこの建物を借受けて以来、子孫へと受継がれた。彼らはこの建物を住居としてだけではなく、収集品を商う場所としても使用した。ウォレスは、父親と共にパリを拠点に活動をしていたが、フランス革命を期にイギリスに戻り、このハートフォード・ハウスをギャラリーとして発展させた。館内には、フランスの家具や陶磁器の展示品が多く、まるでヴェルサイユ宮殿を訪れているかのような錯覚に陥る。しかしながら、ヴェルサイユ宮殿のように豪華絢爛で見る者を圧倒させる雰囲気はなく、むしろ、家庭的で暖かい雰囲気が漂う。友人に招かれて、家を案内してもらっているようなリラックスした気分で見学することができるのも良いところ。ウォレス・コレクションは、ユーロスタに乗らずしてフランスを体験することができるありがたい博物館。ロココ様式の机と椅子ロココ様式は、曲線を多用する繊細なインテリア様式で、ルイ15世の愛人であったポンパドゥール夫人の時代に発展し、最盛期を迎えた。マリー・アントワネットの時代の磁器ルイ16世の后であったマリー・アントワネットの時代には、装飾を抑え直線と均衡を重んじる新古典様式に移行しつつあったが、フランス革命以前の宮廷では、ロココ的な装飾が重宝された。館内の繊細で優美な陶磁器や、どっしりとした中にも格式のある家具は、ご婦人を狂喜乱舞させるが、殿方にとってはいささか退屈な代物のよう。
◎入館料 : 無料