2007年6月、グランド・ハイアット上海に続き、ハイアット・ホテルズ・アンド・リゾーツの上海2軒目となるホテルが北外灘地区に誕生した。その名はハイアット・オン・ザ・バンド(上海外灘茂悦大酒店)。その名のとおり外灘(バンド)を見下ろす位置に立つこのホテルは、外灘と浦東の両サイドの眺望を同時に満喫できる。
ハイアット・オン・ザ・バンドの位置づけ
ハイアットに詳しい人はすでにお気付きだろうけれど、このホテルの名前にはハイアットの3つのサブブランド「パーク」「グランド」「リージェンシー」のいずれの名も付いていない。てっきりハイアット人気にあやかりたい中国産の「偽ハイアット」だと思っていたのだけれど、紛れもなく本物のハイアット。では、ハイアット・オン・ザ・バンドは一体どのサブブランドに属するのだろう。
答えは「グランド・ハイアット」。当初、ハイアット・ホテルズ・アンド・リゾーツはこのホテルを「ハイアット・リージェンシー」ブランドのホテルとしてオープンする予定であったらしい。上海にはグランド・ハイアット上海、今年7月に誕生するパーク・ハイアット上海があるものの、「ハイアット・リージェンシー」はないからだ。ところが、中国側の経営会社はこのホテルのレベルが「ハイアット・リージェンシー」を超えているとし、「グランド・ハイアット」とすることを希望したらしい。ハイアットと中国側の経営会社とが協議した結果、「グランド・ハイアット」ブランドに属するホテルとしてオープンすることが決まり、名前はグランド・ハイアット上海と重複しないよう、「ハイアット・オン・ザ・バンド」となった、とのこと。
外灘・浦東両サイドの眺望を同時に満喫できるバンドスイート・リバービュー
北外灘の黄浦路に建つ一見高級マンションのような建物がハイアット・オン・ザ・バンド。地上33階建てのウエストタワーとイーストタワーが2階のスカイブリッジで繋がるツインタワー形式のホテルで、客室からは外灘の租界時代の建築物、東方明珠塔や近代的な高層ビルが林立する浦東の景色を満喫できる。客室数は全631室(イーストタワー299室・ウエストタワー332室)。なかでもおすすめのゲストルームは、なんと言ってもバンドスイートのリバービュー(外灘套房)。
バンドスイートは三角形の形をした各フロアの先端部分に位置する部屋で、ウエストタワー(25室)とイーストタワー(21室、うち3室はツイン)に計46 室用意されている。バンドスイートの客室は半円形に設計され、周囲を囲む窓からは、180度の壮大な景色を望むことができる。 一方、通常のリバービューの客室からは、上図からわかるように、角度的に外灘または浦東のどちらか一方しか望むことができない(イーストタワーのバンドスイートに近い外灘側の客室からはどちらも見えるかもしれない)。
リバビュー・ルームの他には、10階までの低層階に位置し、価格もやや抑え目に設定されているハイアット・ルームがある。こちらは近所の建物によって一部視界が遮られるため、眺望はあまり期待できなそう。
こうしてみると、ハイアット・オン・ザ・バンドは、バンドスイートに180度の眺望を与えるために、その他の客室の眺望に犠牲を払った、と言っても決して言い過ぎではない。 グランド・ハイアット東京やパーク・ハイアット北京を手がけた設計会社によるデザイン。
ホテルのデザインは、グランドハイアット東京やパークハイアット北京を含む世界の超高級ホテルを数多く手がけている設計事務所、Remedios Siembieda。ロビーフロアの全面ガラス張りの天井からは自然光がふんだんに降り注ぎ、独特な開放感のある空間を演出している。 ロビーフロアは中国的というよりは、むしろ日本的。大きな窓の外には人工の滝、低層ロビーフロアには小川が流れているのが見える。日本の情景を切り取ったかのような川のせせらぎが私たちをリラックスさせてくれる。
夜景を見るならバンドスイート
以前、ある雑誌でハイアット・オン・ザ・バンドの紹介記事を見て以来、ずっと気になっていたバンドスイート。室料は4,300元(日本円で約70,000円)と高額だけれど、それを払うだけの価値はある快適さと眺望であった。
上海といえば、租界時代の歴史的建築物が点在する外灘(バンド)、そして、東方明珠塔を始めとする高層ビルが林立する浦東という2つの対照的な景色が有名だけれど、バンドスイートはラグジュアリーな客室に居ながらにして外灘・浦東の両サイドの眺望を同時に満喫できる。
半円形の客室
各階に1部屋しかないバンド・スイートは、黄浦江に面した三角形のフロアの先端部分に位置する。部屋に入るとまず大きな窓のリビングルームが現れる。ワーキングデスク、液晶テレビ、ソファー、そして望遠鏡までが用意され、インターネットは無料。2007年オープンの新しいホテルなので、何もかもがピカピカ。床から天井まで広がる窓は、夜になると巨大なスクリーンに変わり、黄浦江の両サイドに、近代的な浦東地区の高層ビル群と外灘(バンド)の租界時代の古い街並みを対照的に映し出す。足元には黄浦江が広がっているため、まるで部屋全体が河の真ん中に浮いているかのような錯覚を覚える。
半円形の部屋を更に奥へ進んでいくと、次に現れるのはベッドルーム。こちらの部屋からも目の前に東方明珠塔をはっきりと見ることができる。窓際には白のオットマン付きのチェアー。360度滑らかに回転させることができ、なかなかの座り心地。液晶フラットスクリーンTV、DVDプレーヤー、iPodドッキングステーション等も用意されていて、外の景色を眺めたり、DVDを鑑賞したり、ラグジュアリーなホテルステイを楽しむには申し分のない部屋だと思う。DVDはビジネスセンターでレンタルすることができる。
ウォークインクローゼットはバスルーム側からと廊下からの2方向から入ることができる。バスローブの他に浴衣も用意されている。棚の上にヨガマットとCDが置いてある。
ベッドルームを抜けると、バスルームとの間に廊下がまっすぐ伸びていて、入口のドアへ戻ることができる。廊下には冷蔵庫やティーセットの他、コーヒーメーカー、ワインやウォッカまで用意されている。 特に感激したのは、お茶がティーパックではなく、瓶入りでプーアル茶、龍井茶、ローズティー、カモミールティーの4種の茶葉が用意されていたこと。
ハイアット・オン・ザ・バンドのクラブ・ラウンジ
ハイアット・オン・ザ・バンドのクラブ・ラウンジはイーストタワーの3階に位置している。6:30から10:30までがブレックファスト、17:00から20:00までがイブニングカクテル。今回の宿泊でひとつ不満な点は、このクラブ・ラウンジ。理由は、食べ物の種類の少なさ。飲み物は一日中注文することができ、スイートの客は朝食をレストランのブッフェにすることもできるのだけれど、イブニングカクテルはクッキーやハム、チーズといった簡単なものしかなく、クラブ・ラウンジに期待しすぎるとガッカリさせられることになる。一番損な気分を味わうのはおそらくクラブルームの客だろう。ホテル周辺には飲食店があまりないので、夕食はホテル内のレストランで食べるかタクシーで繁華街まで出なければならない。もうひとつの不満な点は、クラブ・ラウンジの場所。
まさにラグジュアリーなバスルーム
部屋の快適さを左右するのは、なんといってもバスルーム。ハイアット・オン・ザ・バンドのバンドスイートには他の客室とは異なる広々としたバス、トイレエリアが用意されている。
洗面台は今の時代ほぼ当たり前になっているダブルシンク。陶磁器製の白いシンクは浅めにデザインされていて、シンプルでありながらとてもお洒落。洗面台の左手のガラスの向こうには独立したトイレ、右手にはレインシャワー付きのシャワーエリアと大きな丸いバスタブが用意されている。
バスアメニティは、英国王室御用達でもある高級自然派化粧品ブランド「モルトンブラウン」。シャンプー、コンディショナー、バスフォーム、そしてボディローションが用意されている。バスタブについては、同じスイートの客室でも長方形のものと円形のものとがある。この部屋は円形のバスタブ。お湯がなかなか溜まらないほどの大きさ。東方明珠塔を眺めながらの優雅なバスタイムが楽しめる。仕事の疲れなどあっという間に吹き飛んでしまう。バスルームの外には小さなバルコニーが付いている。通常窓の鍵が掛けられているが、リクエストすれば開けてもらうこともできるらしい。
ブレックファスト@「Aloma」
スイートルームの宿泊客は、朝食をクラブ・ラウンジ、ルームサービス、レストラン「Aloma」でのブッフェの3つから選ぶことができる。クラブ・ラウンジの料理があまりにも貧弱なためだと思う。今回は、種類が豊富と聞いていたレストランでのブッフェを選択した。
レストラン「Aloma」はウエストタワー2階。洋食を中心としたブッフェだけれど、中華料理も結構たくさんある。種類の豊富さと料理の質から言えば、これまで食べたホテルの朝食の中で最も満足度の高いものだった。特に美味しかったのはパン類。甘いパンしか食べなかったが、どれもふっくらしており、ひとつもはずれがない。
フィットネスセンター&プール
ラグジュアリーなホテルに欠かすことのできないフィットネスセンター&プール。ハイアット・オン・ザ・バンドのそれは小川の流れる低層ロビー階に設置されている。地下なので窓がないものの、これまで利用したことのあるホテルのフィットネスセンターの中で最も広く、また、2007年オープンなので隅々までとても清潔で気持ちが良く、十分満足のいく設備だった。ジムは24 時間利用可能で、スチームルーム、ドライサウナ、ジャグジー等も付いている。下の写真では隠れてしまっているけれど、スチームルームの横に弧を描くように並んでいるシャワーブースはとてもお洒落で快適だった。
屋内プールも、これまで泊まったことのあるホテルの中では最大規模。縦は25mだけれど、横が広い。営業時間は朝6:00から深夜0:00まで。プールの横にはジャグジーもあるけれど、残念なのは水温がやや低めであること。プールサイドにはデッキチェアーが並べられており、そこで本を読んでいる外国人の姿がちらほら見られた。
付帯施設情報
●レストラン
・「ビュー(VUE)」コンチネンタルヨーロッパクイジーヌ
・「アロマ(Aroma)」中華・イタリアン・和食など各国料理の実演調理が楽しめるブッフェスタイルのレストラン
・「シンダル-チャイナキッチン(Xindalu-China Kitchen)」本格派中国地方料理
・「ティールーム(Tea Room)」お茶各種、デザート、軽食
・「ビュー バー(VUE Bar)」ホテル最上階に位置するくつろいだ雰囲気のドリンクバー
●その他の付帯施設
・ショップ
・ホテルの地下に217台収容の駐車場あり
・設備の充実した24時間オープンのフィットネスセンター
・25mの屋内プール
・12室のトリートメントルーム、スチームルーム、サウナ、ジャクジーを備えた「ユアン スパ(Yuan Spa)」
・バンケットスタイルで1,100名様まで収容可能な1,859m²のミーティング&イベントスペース
・屋外テラスに近接した2つのボールルーム
・ミーティングルーム8室、ボードルーム1室
・映像音響設備・ラップトップコンピューター・携帯電話のレンタルをご利用いただけるビジネスセンター
・屋外エリアを併設したガラス張りのパビリオン「ザ グラスハウス」
フロアー情報
ウエストタワー
30~33階 | ビューレストラン アンド バー |
11~29階 | リバービュールーム |
3~10階 | ハイアットルーム |
2階 | アロマ |
1階 | ロビー、ビジネスセンター、ティールーム |
低層ロビー階 |
ユエン スパ、フィットネスセンター、屋内プール、 ジュースバー、ロビーショップ |