浅草寺境内から、押すな押すなの人波でごった返す仲見世の、裏の空いた路地を早足で抜けると雷門柳小路に入る。目指す店は、その小路にあった。雷門から、ものの2~3分の距離である。店の名は、とんかつ フジ家。ご夫婦2人で切り盛りしている、カウンター席が僅か5席しかない、小さな小さな店である。美味いとんかつを食わせてくれるにも拘らず、間口が狭くて見るからに狭そうに見える店構えと、マスメディアに登場する事が滅多に無いため、この店を目指して訪れる観光客が居ない事から、満席で入れなかったという経験は、今まで無い。所謂、穴場、なのである。浅草暖簾を潜り、引き戸を開けると、カウンター席は3席埋まっていたが、予想通り座る事が出来た。この日は、予め2軒連食を考えていたため、ここで満腹になるつもりは無かった。そんな訳で、定食ではなく、カツ丼を選ぶ。この店で最も安い品が、このカツ丼なのだ。初老のご主人が熟練の技で揚げる美味いとんかつを、800円で味わう事が出来る。丼の上には、小振りのロースカツが2枚、それぞれ4つに切られた状態で載る。これを、程良い甘さの上品なタレを含んだ、溶き玉子でふんわりと綴じてある。ロースといっても、脂身ばかりが目立つ様な肉ではなく、殆ど脂身は取り除かれているため、脂身の苦手な方にも食べ易い。ロース肉のジューシーな肉質を、香ばしい衣、美味いタレを含んだふんわりとした玉子と共に、味わって欲しい。因みに、ロースの脂身も食べたいという方には、定食の方をお勧めしたい。おいしくいただいた。みなさんも是非。