ルーアン大聖堂は入場料なし。無料。これはルーアンに限らず、欧州の多くの教会がそう。たとえそれが有名な観光名所でも、だ。パリのノートルダム寺院も、ケルン大聖堂も、アミアンもランスもシャルトルも中に入って見学するだけなら全部タダだった。いま挙げたこれらの教会は遺跡じゃない、全部“現役”の教会だ。現役である以上は「教会の扉は常に全ての人に開かれていなければならぬ」という思想を体現して入場料ナシで全ての人を受け入れている…ということなんじゃないかと思うんだけど、本当のところはわからない(笑)。そして、巨大ゴシック教会に入って最初にするお約束の行為、すなわち「うーわーーーー…」と言いながら、高い天井を見るために首をグーッと反らせる。正直言ってちょっと驚いた。ゴシック教会建築に関する本ではルーアンの大聖堂を取りあげてる本って意外に少なくて、当然のことながら事前の知識も少なかった。そういう事情と、モネの連作の印象とが相まって、ルーアンの大聖堂っていうのは「スゴいのは主に外観であって、中は大したことないんだろう」という漠然とした予想があった。しかし内部も素晴らしく重厚。まさにゴシック建築の王道を行くようなゴシック聖堂。しかも、とにかく意外なほど大きい。身廊(一番天井が高い中央の通路)を左に見ながら、ちょっと暗い側廊(身廊の両側にある、ちょっと天井の低い通路)にたたずで先を見ると、交差廊をはさんではーるーかー先まで側廊が伸びているのがわかる。特にすごいと思ったのは柱だ。ゴシック教会の柱が実際には1本の石の柱であるにも関わらず、見た目は「何本もの細い円柱がタバになって巨大な柱を形成してるっぽく見せる」っていうのは他の大聖堂でも見た。しかしこのルーアン大聖堂の柱はかなり特徴的で、まるで柱に沿って何本もの細いガス管が設置されたようになってる。しかもそのガス管は柱にくっついてない。浮いてる。石造りの重量感を感じさせず、天に向かうような垂直性を強調するのはゴシック建築では当たり前だけど、この「浮いた細い柱」はすごいと思った。