パタヤからコラートまで、バスで5時間、さらにそこからブリランまで2時間。ブリランの南、カンボジア国境近くの死火山の上に建つ神殿跡である。カンボジアのアンコール遺跡と同時期に建てられた貴重な寺院だ。「パノム・ルン」はクメール語で大きな丘を意味し、名前の通り大平原を見下ろしている。1988年に17年がかりの修復工事が終了した。入口のゲートからは石畳の参道が約160m続く。そして、参道先の石段を上ると目の前に神殿が広がる。神殿は縦66m、横88mの回廊に囲まれており、ピンクと白の砂岩で築かれている。神殿内部にはヒンドゥー教の神シヴァの乗り物、牛像が祀られており、外壁はクメール様式の宗教装飾が施されている。神殿正面上部にある「水上で眠るナ―ラ―イ神」のレリーフが特に有名である。ちなみにこのレリーフは修復前に盗まれてしまったが、シカゴ博物館で展示されているのを偶然観光客が見つけ、返還を要求したのだとか。最初は要求に応じなかったアメリカ側であるが、タイの人気バンドが返還要求の歌をヒットさせたり、返還要求の熱が高まり、元の場所に戻ってきた。また、神殿内の中央通路の両側に、3~4月にかけての満月の日に、太陽と満月が正対するように設計されていると言う。なかなか、趣があって良い遺跡である。