安東ターミナルから46番のバスに乗り、山道を走ること30分、山河と田園、藁ぶきや瓦屋根の伝統韓屋が点在するのどかな田園風景が広がります。ここは「河回村」と言って、豊山柳氏が600年あまり代々暮らしてきた韓国の代表的同姓村です。
河回村は文禄の役の際、領議政(現在の首相)として国難の克服のために活躍した柳成龍とその兄、柳雲龍など数多くの高官を生み出した両班村で、建築物はもちろん、仮面劇や韓国伝統花火などの民俗文化がそのまま残っており、安東の歴史と伝統文化を学ぶのにふさわしい場所です。
村では多くの伝統家屋が民泊として開放しているため、お宅に一泊してのんびり一日を過ごすのもお勧めです。日常からの逸脱とともに、夜にはロマンチックな満点の星空も眺められます。
安東河回村は、洛東川がS字に大きく蛇行し村の3方を取り巻いていることから、「河が回って流れる村=河回村(ハフェマウル)」と呼ばれています。村の一角にある厳かな岩の絶壁「芙蓉台」からは、洛東川に囲まれた神秘的な河回村の全貌を一望できます。
河回村の入口から陸地を迂回して芙蓉台の頂上まで行く方法以外に、渡し船を利用して芙蓉台側に渡る事が可能です。料金は3,000ウォン。
※川の水位が高い場合は船が運営していないこともあります。
河回村は、村の一角に俳優リュ・シウォン氏の実家があることでも有名です。
村の一番奥まったところにある瓦屋根の家がリュ・シウォン氏の実家で、中に入ることは出来ませんが、門の柱に「柳時元」と書かれた表札を見ることが出来ます。
1999年英国エリザベス女王をはじめ、米国ブッシュ大統領父子が訪問したことでも注目を浴びました。
2010年にはユネスコ世界遺産にも登録され、名実ともに安東を代表する観光名所となりました。
河回村の入口前でチケットを購入後、シャトルバスに乗って村の中に入ります。
シャトルバス到着地の右側には総合観光案内所があり、左側にはのどかな田園風景が広がります。
背後の山、広大な田園とあぜ道、藁ぶきの家を見ていると、都会からの開放感を感じ、穏やかな気持ちになります。
総合案内所を過ぎて右側の並木道を進むと、右手には洛東川の流れと芙蓉台、万松林が連なり、自然の織りなす美しい風景を観賞できます。並木道の木は全て桜の木で、春はお花見、秋は紅葉と、四季の風景を楽しめます。
ちょうど芙蓉台の向かいに連なる松林(万松亭)は、儒学者の柳雲龍が植えたものと言われています。
風水地理的に西側の志気が弱く、これを補完するために作られたと言います。立派に伸びた松の風景と香りが良く、心が洗われるような気持ちになります。
忠孝堂は柳成龍の宗宅として建てられたもので、「忠孝堂」という堂号は、柳成龍が日頃から子孫に「国に忠誠を尽くし、両親に孝行しなさい」と忠と孝を強調していたところから由来しているそうです。忠孝堂は保存状態が大変良く、朝鮮時代の民家建築様式を見ることが出来ます。
忠孝堂の隣にある「永慕閣」は、柳成龍の遺品を展示・保管するために建てられた建物です。
永慕閣では、柳成龍の生涯の歴史、古文書や遺品を見ることが出来ます。
遠志精舎は、柳成龍が書斎として使用する目的で1576年に建てられました。
遠志は、遠志山から採れる薬草を指し、心をやすらげ精神を清らかにする効能があり、柳成龍がよく食べていたものだったと言います。
楼閣は現在上がることができませんが、ここから芙蓉台と洛東川、河回村の藁ぶきの家が調和した美しい風景が観賞できます。
1600年代に建てられたと推測される、柳雲龍の宗宅です。朝鮮時代の別堂建築物の一つで、一般の住宅よりも大きな作りになっています。位牌を奉る祠堂には、父・柳仲郢と柳雲龍が不遷位として奉られています。養真堂の裏であり河回村の中心地には、「三神堂の御神木」という、樹齢600年を超える欅の木があり必見です。
サムルノリと一緒に展開される仮面劇「河回別神グッ仮面舞」は、河回村に行く人必見の文化公演です。
河回別神グッ仮面舞は、村の守護神に豊作と厄ばらいを願い、神を楽しませる娯楽行為として行われていた祭祀を再現したもので、国内の仮面の中で唯一国宝に指定されている河回仮面を付けて行われます。
劇中には登場人物に合わせて色々な仮面が出てきますが、仮面の表情や所作、セリフ回しなどが個性豊かで魅力的です。劇の時代設定は朝鮮時代ですが、ユーモアと風刺がちりばめられており、時代も国境も超えて万人が共感できる内容になっています。
仮面劇公演時間
下記のスケジュールで14時~15時まで、総合案内所の向かい、河回村公演場にて開催。
1月~2月:土、日
3月~12月:水、金、土、日
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河回村別神グッ仮面舞
河回村からバスで15分ほど行ったところ、洛東川沿いにもう一つの名所、屏山書院があります。
ここは、儒学者でありながら領議政を務めた柳成龍が弟子たちに教えを諭した場所です。柳成龍の没後、弟子たちによって位牌を祭る祀堂が建てられ、講学堂と東・西齋、位牌を祭る尊徳祠を持つ書院になりました。
屏山書院の正門と講学堂の間にある「晩対楼(マンデル)」から洛東川側を眺めると、屏山と洛東川の美しい眺めを見ることが出来ます。残念ながら、現在は登れませんが、建築物そのものが美しく貴重なので時間さえあれば是非見ておきたいスポットです。
屏山書院までは河回村から出ている46番のバスで行けます。
停留所:総合案内所向かい
河回村発→屏山書院着 バス時刻
8:40 / 11:40 / 15:10
屏山書院発→河回村着 バス時刻
9:10 / 12:10 / 15:40
※バスでの移動は10~15分程度所要
河回村の総合案内所左にある一本道は、蓮池と田園が左右に広がり、美しい景色を眺められます。
河回村の道は低めの土塀が左右に続いており、まるで時代映画の中に入り込んだような気分を味わえます。
リュ・シウォン氏の実家(澹然齊)の土塀には、郵便ポストのような穴があります。穴の中には、貧しい人たちへの施しに穀物などを置いていたとのことで、一遍に取り出せないように小さな造りになっています。
河回村の片隅には、大きなブランコとノルティギ(端でジャンプして遊ぶシーソーのようなもの)、シルムパン(土俵)があり、伝統的な民俗遊戯を体験できます。
河回村のバス停で降りてすぐ右手に「チケット売り場」があります。
こちらでチケットを購入し、シャトルバスで河回村の中に入ります。
入場料金は、大人3,000ウォン、中高生 1,500ウォン、小学生 1,000ウォンとなります。小学生未満の児童は無料です。
チケット売り場のすぐ隣に物品保管所があります。
中にはロッカーがあり、無料で保管が可能です。使用方法は簡単で、空いている箱に荷物を入れドアを閉じ、ドアに付いた暗号キーの「*」を押した後に数字4ケタを押し、最後に「*」を押すと、音がしてロックが掛かります。ロック解除時も同じように暗号を押せば解除できます。
チケット検問所の横には観光案内所があり、無料で河回村の地図付きパンフレットや安東の観光案内を貰えます。
チケットの検問後、無料シャトルバスに乗車し5分で河回村内に到着します。徒歩で行く場合は15分程度所要する距離です。シャトルバスは10分~15分間隔で河回村の入口と検問所を往復しています。
河回村内の総合案内所では、親切な観光案内を受けることが出来ます。日本語の音声ガイドも無料で配布しているので、必要でしたらこちらで受け取りましょう。
河回村の近辺には、「河回ジャント」と言う食堂や記念品売り場が集まった小さな市場があります。
河回村の中では商店が制限されているため、河回村の外側にお店が集まったようです。こちらで、安東名物の塩サバ定食、チムタク(蒸し鶏)などが食べられます。
河回世界仮面博物館も河回村入口近辺にあります。時間があればこちらも是非立ち寄ってみましょう。
運営時間:9:30~18:00
休館日:旧正月期間、秋夕(旧盆)期間
入場料:大人 2,000ウォン 小中高 1,500ウォン 小学生未満無料
安東ターミナルから河回村への行き方
安東ターミナルから河回村には46番バスで行けます。
安東ターミナルの正門前にはタクシー乗り場があり、道路側にバス乗り場があります。
地面に青い字で「BUS」と書かれているのが目印です。このバス乗り場から46番のバスに乗車し、河回村に行くことが出来ます。
○走行距離:約20㎞
○所要時間:約30分
○料金:1,200ウォン
○時刻表(※2016.07.02撮影)
06:30 / 08:00(※屏山書院経由) / 09:10 / 10:20 / 11:10(※屏山書院経由) / 12:20 / 13:30 / 14:30 / 15:30(※屏山書院経由) / 16:20 / 17:30 / 18:30
河回村から安東駅 or 安東ターミナルへの行き方
総合案内所の向かいから安東駅、安東ターミナルに行く46番バスが出ています。
屏山書院も同様に46番バスで移動が可能ですが、屏山書院を経由する路線は1日3回しか運営されていないため、必ず予め時刻表で時間をチェックしましょう。
※河回村入場前にチケット売り場隣の物品保管所で荷物を預けられた方
河回村は、都会ではなかなか感じることのできない穏やかで平和なひとときを感じることが出来る空間です。また、人工的に造られた民俗村とは違い、村のひとたちの生活を見ることが出来ます。
田舎のスローライフを体験したい方は是非安東の河回村に行ってみましょう!
きっといつもと違う時間の流れや自然の美しさを体感することが出来るはずです。